誰かの暮らしに自然と溶け込む|大久保 志朗

誰かの暮らしに自然と溶け込む|大久保 志朗

「本当においしいディカフェコーヒーを届けたい」

私たちはそんな思いから、ローカルに根付くコーヒースタンドを目指しています。

地域のコミュニティ、ディカフェのコーヒーを日常的に飲む方々、そして私たちメンバーの身近な方々…さまざまな「ローカル」のコミュニティに根付き、長く愛されるお店になりたい。そんな思いからこの連載をスタートしました。

本企画では、私たちにとってローカルなみなさまとともに、ディカフェのある暮らしや、ひいては生活の豊かさについて考える場にしていきたいと思います。

第二回目にご登場いただくのは、「de. coffee roasters」代表 古賀 裕人の旧友である大久保 志朗さんです。

就職を機に上京し、東京都大田区、墨田区、世田谷区での暮らしを経て、湘南エリアへ移住した大久保さん。さまざまな街に住んだからこそ見えてきた大久保さんならではの「ローカル」について伺いました。

聞き手は「de. coffee roasters」代表の古賀 裕人。
ふたりが考える「ローカル」な街の魅力や、その面白さをお届けします。

ディカフェのコーヒーとともに、時間を楽しむ

古賀:大久保くんは普段からコーヒーを飲む人だっけ?

大久保さん(以下、敬称略):実は昔はコーヒーが好きじゃなくて、むしろ「敵」みたいな存在だったんだよね。古賀くんもご存知の通り、20代の頃はひたすら働いてハードな毎日を過ごしていて。当時は缶コーヒーをガブガブ飲んで、仕事モードに入るためのスイッチとして使っていたから。

古賀:そうだったんだ。

大久保:そう。でもその生活をやめたら、今度はコーヒーを飲むと逆に眠くなるようになっちゃって。飲めるけどちょっと変なテンションになってしまうというか(笑)。

だからしばらくはコーヒーから距離を置いてたんだよね。でも最近は「ディカフェ」のおかげで、改めてコーヒーを楽しめるようになったかな。

古賀:1回離れて、また飲むようになってっていう感じなんだね。具体的にどんな経緯でディカフェを飲むようになったの?

大久保:街にディカフェのあるコーヒースタンドが増えてきたから、一度トライしてみて。で、たまたまそこのディカフェがおいしかったから、飲むようになった感じかな。

最初はディカフェって少し薄いコーヒーだと思ってたんだけど、飲んでみるとちゃんとコクがあって、毎日飲める「ちょうど良さ」がある。だから最近は、家でディカフェの豆を挽いてドリップして飲むのが好きなんだよね。

古賀:昔はコーヒーが「戦うための燃料」だったと思うんだけど、今は大久保くんの中でどんな存在?

大久保:今は全然違う存在。休日の朝、家族が起きる前にコーヒーをドリップして、ゆっくり飲む時間がすごく整う時間になっていて。コーヒーを淹れるのが、1日の始まりになってる感じ。

古賀:朝からゆっくりコーヒーを味わうと、自分の時間を有意義に使ってる感じがするよね。

大都会にひっそりと佇む、生活が息づく街

古賀:大久保くんは今日ここに来る前にも家族で一度お店に遊びにきてくれたよね。水天宮・浜町エリアに実際に来てみてどうだった?

大久保:この辺りは来たことなかったけど、日本橋とかと違って、ちょっと喧騒から離れている感じがする。日本橋って言うとリクルートのビルとか大都会のイメージがあるけど、ここは全然違う。大都会の隙間みたいな感じ。

古賀:どちらかというと下町だね。

大久保:そうそう。昔から生活がここにあったんだなっていう、落ち着きが感じられる街だなって。名所と街の雰囲気がちゃんと合ってて、違和感がないところもいいね。

古賀:作られた感とか、過度なおしゃれ感もないよね。

大久保:うん、まだそういう感じじゃない。今後開発が進んだら変わるかもしれないけど、20年後とかには清澄白河みたいな独特な魅力を持った場所になるかも。

古賀:ただ便利になるだけじゃなくてしっかり街の魅力が残っていくと良いよね。

大久保:古賀くんはお店を引き継いでみて、この街の印象は変わった?

古賀:いや、あんまり変わらなかったかな。東京駅から近いのに都会感が全然強くなくて、ほどよく落ち着いているというか。

あとはお客さんたちも、いい人たちがやっぱり多いかな。最近、近所で働く若い男性のかたがよく来てくれるんだけど、飛び込み営業で疲れた時、休憩がてらコーヒーを飲みに来てるみたいで。そんな使い方をしてもらえるのもいいなと思う。

大久保:誰かのルーティンに組み込まれてるお店っていいよね。

ローカルな街に住んで感じた変化

古賀:大久保くんはこれまでいろんな街に住んできたと思うけど、特に好きだった街はある?

大久保:駒沢は面白かったかな。駒沢大学、都立大学、学芸大学の間に住んでて、散歩するだけで街の雰囲気が変わるのが楽しくて。ビュッフェみたいに街を楽しめた。東京に住むいちばんの面白さはそこだったかな。

古賀:でも、そこから湘南エリアに移ったのはどういう意思決定だったの?

大久保:コロナでリモートワークになって都内の家が手狭に感じたから。駒沢も好きだったけど、ちょっと冒険してみようかと。で、「冒険するなら海でしょ」「海の近くに住みたいよね」と、海といえば無条件にテンションが上がるから行ってみようって。賃貸でしか住めないようなところにも住んでみたかったから、間取りが7DKもある築90年の古民家に住んでた。

古賀:面白いね。逗子の方はローカルなコミュニティとかあったの?

大久保:僕はそんなに長くいたわけじゃないけど、お隣さんがたまたま友達だったから、色んな人を紹介してもらったりはしたかな。あとは、移住して湘南エリア周辺に住む友達も増えた。僕が移住noteを書いたことをきっかけに、「お茶しましょう」と声をかけてもらえるようになったりとか。

古賀:コロナを機に湘南エリアに移住した人たちも多かったもんね。今住んでる辻堂はどんな街?

大久保:辻堂もいいところだよ。近くに約280店舗が入った「テラスモール湘南」というショッピングモールがあってとにかく便利。子どももいるからローカル系のお店の開拓はこれからだけど。

でも、移住してスタート地点が変わったことで行動範囲は結構変わったかな。1時間あれば熱海にも行けるし。都内に住んでた頃とはまた違う面白さがある。

古賀:行動範囲が変わると価値観とかも変わった?

大久保:うん、ディグる面白さみたいなのを、より感じるようになったかな。東京だと完成されたものを取りに行く感じだけど、こっちは少し気の抜けたユーモアのあるものを探すのが楽しいね。

古賀:それが「ローカル」の魅力の一つだよね。掘り出し物の面白さとかもあるの?

大久保:うん、まさにそれだね。掘り出し物を見つけるために新しい街に行ってみる、っていう過程が面白いんだ。うちの家族もそういう謎グッズを集めるのが好きでさ。だから、探すためにわざわざ足を運ぶようになったかな。ローカルにはそういう楽しさがあるんだよね。

あと、時間の使い方も変わったかな。都内だと消費する楽しさが多かったけど、こっちでは何かを作る人が多いかな。畑仕事や釣りをやってる人も多くて、自分も少し影響を受けて水耕栽培を始めようかなって思ったり。

誰かのルーティンに。そんなお店づくりを

古賀:今日いろいろ話を聞いてみて、大久保くんが考えるローカルの面白さをこの店に活かせたらいいなと思ったな。

大久保:そうだね、街の雰囲気にフィットしたプロダクトや、お店全体の雰囲気がすごく大事だと思う。ローカルなお店って、やっぱり地域の人に長く愛されているし、その人たちの日常にお店を取り入れてもらうことが重要だよね。もちろん「おいしい」と感じてもらえるのも大切だけど。

古賀:そうだよね。通いたくなるお店と、一度行って終わりのお店ってあると思うんだけど、大久保くんが思う「また行きたくなるお店」の魅力って何だろう?

大久保:やっぱり「人」が魅力的なお店は、自然と地域に根付くと思う。常連さんが多くて、お店の人との距離が近いと、居心地が良くて何度でも行きたくなる。それに、その街の個性や魅力を表現できているお店も魅力的だよね。

古賀:結局、ローカルでお店を長く続けていくには、売り上げがめちゃくちゃ上がる必要はないんやけど、「この店だから来たい」って思ってもらえる何かが大事やと思う。それが「人」でも「プロダクト」でも、全体の雰囲気でもね。そういうのを大切にして、続けていくのが重要やなって改めて感じた。

僕のマーケティングの仕事も突き詰めると「ローカルビジネス」だから、オフラインでどうなるかを試してみたくて。最終的には、どれだけ近くの人を大切にできるかが一番大事だと思う。

それに、AIが進化して僕たちがしなくていいことが増えていく中で、最後に残るのはコミュニケーションとかだよね。AIにはできないことにこそ価値があると思う。

大久保:うん、地域の人たちの生活に自然と溶け込むお店って理想だよね。朝の通勤前に寄れるとか、仕事帰りにホッと一息つける場所、休日に家族でゆっくり過ごせる場所みたいな。そうやって、地域に愛されるお店になるといいね。

プロフィール

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大久保 志朗

飛騨出身湘南在住のインターネットサーファー。
スタートアップ会社員。海苔とダジャレと少年ジャンプが好き。
ポッドキャスト「湘南ネットサーファーズ」を運営。

執筆:とみこ
撮影:横尾涼

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